たりさんぽ

元海外駐在員のサラリーマンの雑記

シン・ゴジラ感想 日本vsゴジラならこれでしょ

こんにちは。たりです。

シンガポールでも8月25日からシン・ゴジラが上映開始となりましたので、観に行ってきました。日本でも高評価でしたが、僕も非常に楽しく観れました。

ハリウッド版のゴジラも映画館で見たことがありますが、個人的にはシン・ゴジラの方が好きです。日本の評価もだいぶ分かれていたので、どんなものか期待していたのですが、やっぱり好みの分かれる映画ですねこれは。

 

※以下、ネタバレを含みます。

 

日本vsゴジラをよく表している

冒頭から首相官邸近辺や、閣僚、中央省庁の内部の話が続きます。一つの決断をするのに総理大臣が縦に振らない限り物事が進まない。また、事を荒立てないように新しい仮説や意見はことごとく否定されて、予定調和が好まれます。総理大臣も特に自分で決断できる事は少なく、ただただみんなの責任を取るためだけにいるような存在。

一コマ、国民を第一という信念が垣間見えましたが、結局それは被害者を増やすことに繋がっていきました。小さいゴジラのままなら自衛隊で仕留められていたかもしれないですね。

日本の意思決定のトップというのはどれほどの重圧なんだろうということと、周りが好き放題言いたいこと言って、結局責任取らされるのは自分という、逃げ場のない状況というのはさぞかし嫌な気分だろうなと。新しいことをやるのが難しい日本の特徴が満遍なく散りばめられていて、いろいろ考えさせられた序盤でした。

どうやら全体を通して、会議室での会話場面が全体2時間のうちの1時間くらいあるらしいですね。これが合わない人にとっては非常につまらない部分だったようです。

僕としては、企業勤めをしている中で良くある社内政治の話を思い浮かべながら、内外に問題を抱えるプロジェクトをどうやって、根回しをし、どうやって対策を立てて実行していくかという部分について、まさに自分のことのように感じることが出来たため、これが面白く感じました。

まさに日本の企業内での社内政治や中央省庁の内部の政治にもがきながら、それでも対策をとって生き延びねばならない、日本人ぽい特徴ある映画になったのだと思います。ハリウッドでは絶対にウケないし、シンガポールでもウケるか怪しいと思います。日本人で古くて固い日本企業でもがいている人ほど、共感できる部分があると思いますし、この映画を見て、自分ができることがまだあると勇気付けられた人もいると思います。

そういった意味で、日本vsゴジラの構図が驚くほど描かれているなと思いました。

 

入念に準備し、ミスなく実行するプロ意識のある人たち

二度目のゴジラ出現に向けて、自衛隊は入念に作戦を組み立てます。どの場所に出現した場合に、1次対策、2次対策はどうするか、初動で何も出来なかった反省を活かし、次に備えます。また、ゴジラが1回目でてきた後も鉄道、公共交通機関、学校などはまるで何事もなかったかのように再開。それぞれの仕事を持った人はそれぞれ自分のできることをちゃんとやる。こう言う細かい描写の中でも監督の意図を感じ取れる気がして(勝手に想像しているだけですが)楽しめます。

さて、2回目ゴジラの登場。神奈川から東京へ上京するゴジラに対し、多摩川を絶対に死守する攻防戦が始まります。

自衛隊の爆撃で「すげー」と思ったのは、まさかの全弾命中する場面。ヘリコプターからミサイル打って全弾命中するものなんですかね。その辺の精度というのはよくわかりませんが、とにかくやるべきことをやるプロ意識が垣間見えた気がします。

結局、ゴジラが想定外に硬く、攻撃は少しだけスピードを弱める程度。

それでも、中盤の見所はなんといっても、自衛隊の攻撃や警察の迅速な避難誘導、加えてなんでもない日常を再開させる、各方面、職業人のプロ意識です。

 

それでも敵わない…広がる絶望

強すぎるゴジラ。東京に進出し、大混乱。米軍のミサイルも使用されるものの、放射線攻撃?レーザービーム?のようなチート技によって、人々は絶望するしかない。

大災害に見舞われた絶望の様子が本当によく描かれているなと感心しました。

僕自身も阪神大震災に被災していますし、東日本大震災では東京での混乱を目の当たりにしています。

さすがにここまでくると、一旦ゴジラは休眠状態に入ったものの、生活を立て直すことは困難。避難生活が始まります。

 

東京に核を落としたらどうなるの?

これは考えさせられます。どうやって都民360万人を疎開させるのか、地方に受け入れ態勢はあるのか、経済は回るのか、政府は京都に移るのか、など、もしも実際にそんなことが起きたらどうなるのか想像しながら観ました。

実際に、今後30年以内に首都圏で地震が起きる確率が90%とかそんな予測が出されている昨今ですが、富士山噴火して、大地震で東京が壊れたらと思うと非現実的な妄想では決してないと思います。

自分ならどうするか、よく考えておく必要があるんだなと考えさせられます。

 

ヤシオリ作戦

ハリウッドでは絶対に採用されないこの作戦は、やはり賛否両論あるみたいですね。僕としては、迫力とかそんなのは抜きにして、「現状で出来ることを100%実行した」という部分に拍手を送りたい。

ちなみに帰ってヤシオリってなんぞやと気になって調べたところ、古事記のヤマタノオロチを酔っぱらわせて退治するという神話に出てくるヤシオリの酒というものから。これ、もし僕がその事実を事前に知っていてこの映画を見たら、めちゃくちゃニヤけるでしょうね。こういう設定大好きです。主人公の矢口さん、よく知っていたなと。教養というのは人生を豊かにできるものだなとしみじみ。一つ勉強になりましたし、日本神話もっと知りたくなりました笑

 

問題は山積み

一旦ゴジラを凍結し、国連軍から核を落とされることは保留となり、物語は決着します。それでもヤシオリ作戦が成功しても誰も手放しで喜ばないし、「やっと。。終わった。。」感が出ているのが非常に良い!ハリウッドだったら被害者総出で万歳、歓声ワーで終わるところを一味違ったリアルに近い描写をしてくれたと思います。

問題は山積み。全く解決していません。まるで、東日本大震災で一旦原発の問題が終息した時のような、あの感覚。それでも誰かが前に進めていくしかない。その誰かは官僚であり、建設業界であり、放射能業界であり、普通の教育界でもあり、国民みんなで復興していく以外にありません。映画の世界では閣僚が大勢亡くなったので、組閣あるいは選挙で国のトップも同時に決めていく必要がある。みんな全力で力を出し合って支えていくしかいない。そんな妄想が捗ります。

あのゴジラは今後どうするのでしょう。凍結剤を継続的に投与し、一旦山奥に頭だけ出して埋めて、研究を続けるとしても、どうやって移動するの?とか考えながら最後の場面。尻尾に人間の骨らしきもの。今後の研究で、どうやってゴジラが生まれたのか、驚愕の研究結果が発表されそうな雰囲気を残して物語はおしまい。

 

総括

最近見た中で一番の面白さでした。

この映画が真に認められる国が日本以外にあれば、その国と日本は相当近い感覚を持っているんじゃないかと思います。

社内政治にもがく社会人の胸にぐさっとくるものがあると思います。特定人物の行動原理や背景がなく、感情移入できなかったというような評価も見ましたが、庵野監督が描きたかった部分がそういう部分でなかっただけ。もっと、日本企業の空気感とか職業とかそういう部分に焦点が当たっている気がしています。

僕自身、今の会社は結構縦割りで、融通が利かなくて、時に根回しがないとプロジェクトがうまく進まなくて、なんでこんな承認が必要なんだとイラついて、制度が硬くて身動きが取れなくて、もがいています。それでも前に進めなくちゃいけないものがある。面倒だけど、誰かがやらなくちゃいけないことがある。そんなメッセージをもらった気がしました。

 

長くなりましたが、やっぱりみんな評価を書きたがるように、僕も書きたくなって書いてしまいました。ちょっと日本のブームに乗り遅れましたが、後々になって、もう一度自分の感想を読んで、もう一回テレビで見れたらいいなと思います。

 

それではまた次回。